大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

お散歩  4・28

先日、あんなこと(「都祁だより・・・桜の頃」)を書いたのだから、それに続く今回の記事ぐらいは、本来、そのことを受けての書くべきなのだろう。私自身もそのつもりで、それなりに調べを進めていたりもしたのだが・・・・

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「蒼天」という言葉は、まさにこんな空のためにあるのではないか・・・との思われるようなこの空の色に誘われ、朝食を済ませた後、お茶もそこそこにいつもの散歩道へと足を運ばせた。

家のすぐ裏手を三輪山むかってのびる坂道を上る。突き当りは三輪山平等寺。いつもながらの静かなたたずまいだ。いつもととおり私はそこから北上し、大神神社へと向かう。

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境内では、この春、その任に就いたばかりの巫女さんたちが先輩の巫女さんから、あるいは神主さんたちから、様々な指示を受けて忙しく動き回っている。まあ、一般の会社でいえば新人研修っていうやつなのだろう。まだ身についていないその衣装が落ち着いて見えてくるのは・・・まだまだ先のことか・・・

拝殿に向かいいつもの通りの祈りを済ませた後、山の辺の道沿いに狭井神社へと向かう。すると、その途中にある磐座社のあたりで妙齢(私より少し上ぐらい・・・笑・・・)のご婦人が、その周辺を掃き清めていたこれまたご立派な恰幅の神主さんに唐突に問いかけた。

あのう・・・この辺りにキノコみたいな花が咲いてるって聞いたんですけど・・・ちょっと名前を忘れちゃって・・・(ご婦人) キノコみたいな???(神主) そうそう、エノキだけを少し太くしたみたいな・・・(ご婦人) ああ、銀竜草ですか・・・(神主) そうそう、その「ギンリョウソウ」・・・(ご婦人) それなら、拝殿の南側の手水場の裏の方にある小さなお社の裏手あたりに・・・(神主)

私も銀竜草の名は知っていて、写真などで見かけたその風変わりな姿をぜひ一度見たいと思っていた。この大神神社の周辺に咲いていることも情報として知っていたのだが、なかなかお目にかかれないでいた。「見たい」と思った。けれども、そのあたりはさっき通り過ぎたばかりで、今さら引き返すのも何やら気が引けた。今日の所はあきらめてまた明日散歩すればいいかと思い直し、私は先に進むことにした。

そしてたどり着いたのが狭井神社。

鳥居をくぐり拝殿へと向かう途中、もしやと思う気持ちが、私に参道横の三輪山の斜面に目を向けさせた。

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少々見づらい写真になったが、銀竜草である。咲いていたのは、ご神体である三輪山の斜面。その手前にある柵から4~5m。禁足地であるこの斜面に足を踏み入れてはいけない。私はカメラ付き携帯電話のレンズをできるだけ被写体に近づけるために手を伸ばす。下手にズームするとすぐにぶれてしまう。伸ばしきった故に震えがちなその手でシャッターを押した。

何度も何度もシャッターを押したのだが、手が震え、うまく取れない。上の写真はその中では最もましだったものである。まあ、ネット上で検索すればいくらでもその画像を見ることができるんだから、今日の所はこれで勘弁していただきたい。

銀竜草は別名「幽霊草」。暗い茂みの中で青白くうつむくその姿が、幽霊のそれに似ているところからそう呼ばれているのだろう。ご覧のとおり葉緑素は持っておらず、ベニタケ属菌類に寄生し、そのベニタケ属菌類の共生する樹木が光合成により作り出している有機物を、ベニタケ菌を経由して手に入れてその生を支えている。光合成のできる植物の上前をはねるのがベニタケ菌類。そしてそのベニタケ菌類に寄生しその上前をはねているのがこの銀竜草なのだ。

その控えめな姿には似ない阿漕な植物を楽しんだ後、両脇を草地に挟まれた小道を歩いていると左手の草むらからカサコソと音が聞こえる。何事かと足を止めて音のする方向を見ていると唐突に褐色の小動物が小道へと躍り出た。

狸・・・?

いや、ちょっとちいさい。それに狸にしてはその褐色が浅く、しかも走り方に少し癖がある。ぴょんぴょんと跳ねるような走り方だ。しばらくの間、小道に従って私にお尻を見せながら小走りに進んだ後、ふと振り返り、私の姿に気が付いて右側の草むらへとその愛らしい姿を隠そうとした。

けれどもその草むらの草はまだ生えそろってはおらず・・・

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これまたとっさに押したシャッター故、ピンボケになってしまっていることはご容赦願いたい。

「頭隠して尻隠さず」とはまさにこのことだ。その隠れているはずの頭部からひょこんとみ長い耳が飛び出している・・・野兎だ。猪やら鹿やら猿やらが住み着いているのが三輪山だから野兎ぐらい珍しくはないのだろうが、こうやって直にご対面するのははじめてだ。

少々面食らった思いがした。

その場所からしばらく行くと私の散歩道は折り返し地点にさしかかる・・・