大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

「水木しげるの古代出雲」を読む。

昨日、とある書店にて、ふとその書棚平積みにしてあった一冊の書から声をかけられた・・・「俺を買え・・・面白いぞ・・・」と。

 

8月14日、毎年奈良公園の夜を彩る燈花会の最終日。私はその限りない数の灯火にひと時心をゆだねるべく、その午後、奈良公園へと向かっていた。夕時の混雑を避けて早めに家を出たせいか、奈良に着いたのは午後4時。暗くなるにはまだまだ時間がある。何か時間つぶしを・・・

ということで、私は燈花会の会場からは少々距離のある書店でしばらく過ごすことにした。なにせ盆地である奈良の夏は暑い。こんな場所でいつまでもうろうろしてはいられない。冷房が効いていて、少々長めの時間をつぶせる場所・・・といったら、ある程度の規模を持つ書店が最適だ。

書店の書棚の間を徒然に任せさまよい歩く・・・

ふと耳に入ってくる声が・・・「俺を買え・・・面白いぞ・・・」

書棚を見る。

 

水木しげるの古代出雲」であった。

実は以前、この書店を訪れた時、同じ声をこの本からかけられていた。けれども堅実な私は1度ぐらい声をかけられたからと言ってすぐに買ったりはしない。

古代大和において男に声をかけられた女は、1度目の誘いの乗るような軽薄なまねはしなかった。1度目の誘いは丁重に、あるいは手厳しく拒絶したうえで2度目の誘いを待つ。そして2度目の誘いがあったならば、女は・・・

私は男ではあるが、古代大和の女たちのならいにしたがって、1度目の誘いは冷たく無視をしていたのだ。が、昨日、その所の前を通ると前にもまして激しい誘いが・・・

「俺を買え・・・面白いぞ・・・」

そして、今、この稀代の漫画家の作品は私の手元にある。

昨日は夜遅くまで奈良公園をさまよい歩いたため、この書のページを繰ったのは今日・・・面白い。文句なしにその世界に引きずり込まれた。作中にも登場するあの梅原武の説くところを採用しているのか、その叙述において、しばしば学問上は従えない部分もないではなかったが、とにかく面白い。

今もなを第一線を行く、出雲出身のベテラン漫画家が、おそらくはなかなりの年月、その腹中において練りに練った作品がつまらないはずはない。

 

ところで・・・私がこの書を贖うきっかけとなったのは、奈良公園を中心に行われる燈花会へと出かけたことであった。毎年のようにこの催しには足を運び報告をし続けてきたので、今年はもういいか・・・なんて思わないわけでもないが、かなりの枚数の写真を撮ってきた。

順にいくつか紹介してみたい。

まずは、メイン会場にほど近い新奈良公会堂。

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正面に見える大屋根がそうだ。そしてその背後が春日山

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その春日山の左側手前に見える美しい円錐が御笠山だ。百人一首に「天の原 ふりさけ見れば 春日なる・・・」と阿倍仲麻呂に詠まれたあの山だ。ちょっと見るとその円錐は三輪山のそれに似ていないこともない。かつて明日香や藤原の都に居住した都人はいつも三輪山の美しい円錐を東に見て暮らしていた。710年、彼らはその明日香・藤原の地を捨て平城の地へと移り住んだ。そして彼らは・・・東の空に同じ円錐を求めた・・・それが御笠山なのだ(私の独断ではあるが)。

まだいささか蒸し暑く、周囲も決して暗くはない。暗くなるまでのほんのわずかの時間を涼しく過ごそうと解放されている公会堂へと向かう。

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この公会堂・・・珍しいのは中に能舞台を備えていること。

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この公会堂で行われる各種会議は、この能舞台を中心に行われる。残念ながら私は行く事が出来なかったが、6月にあった古事記学会もこの舞台にて発表が行われていたと聞く。

さて、日も暮れかけてきた。

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そろそろ灯りが入り始めた・・・暗さは増してゆく・・・・

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しばし、周囲に漂うむっとするような空気を忘れ、心を闇に揺らめくろうそくに火に心を遊ばせ・・・

・・・夏の夜は更けて行った・・・・