大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

春日大社へ行く・・・5

春日大社若宮の周辺には、若宮をその数に入れて15の御社が密集している。そこで神社側はそれら15のお社の全てをまわる15社めぐりを勧めている。正確には言えないが、100m四方もない区域にに15の神の社がひしめき合ったこの場所には、若宮神社祭神である天押雲根命(アメノオシクモネノミコト)をはじめとして、

少彦名命(スクナヒコナノミコト)・・・大国主命の国造りのパートナー

大巳貫命(オホナムチノミコト)・・・大国主命の別名

倉稲魂神(クライナタマノカミ )・・・お稲荷さんと同一神らしい?

一言主(ヒトコトヌシノカミ)・・・http://soramitu.net/zakki/?p=1042

伊弉諾尊(イザナギノミコト)・伊弉冊尊(イザナミノミコト)・・・ご存知、国生みのお二人

神日本磐余彦命(カムヤマトイハレヒコノミコト)・・・まあ、神武天皇のことですな

蛭子神(ヒルコノカミ )・・・伊弉諾・伊弉冊夫婦の最初のお子様、

市杵島姫命(イチキヒメノミコト)・・・天照大御神素戔嗚尊の天真名井で行った誓約(ウケヒ)の際に素戔嗚  の件から生まれた女神。子育ての神、航海の神。  

大国主命(オホクニヌシノミコト)・須勢理姫命(スセルヒメノミコト)・・・出雲神話のビッグスターにその奥さん。このお二人が一か所に祀られているケースはここだけだと書いてあった。

・・・この周辺にはまだまだ神様がいらっしゃるが、そろそろ飽きてきた。よって、これで最後にするが、これだけの、いや、これ以上の多数の神様に一気にお参りできるのから、信心深いお方ならばこの15社めぐりをしない手はない・・・

けれども、今日の私には次の目的があった。

ということで、そのうちのいくつかの神様に手を合わせただけで、もと来た参道に戻る。参道沿いにまず目に付くのは

IMGP0295

IMGP0296

見るも巨大な楠だ。幹周は約11.5m。奈良県下で1、2を争う巨木だ。江戸時代の半ばに大雪のため上部が折れ、今のような樹形になったらしい。

さて、ここまで歩いてきた道を、そのまままっすぐ進めば春日の森を抜けて高畑の町へ抜ける。上の禰宜(ネギ)道という。更にこの春日大社から高畑へと森を抜ける道が二つ。順に中の禰宜道、下の禰宜道である。ことに下の禰宜道は「ささやきの小道」の名で知られる散策路となっている。

その先には旧志賀直哉邸、そして新薬師寺白毫寺といった名所が控えている。さらには入江泰吉記念奈良市写真美術館なんてのもある。ちょいとおすすめな道だ。

けれども今日はそっちへは行かない。私が足を向けるのは春日大社の営む万葉植物園。500円の入園料を支払い、園内にはいる。

P1050608

今は季節柄、咲いている花も少ないので訪れる人も少ない。森閑とした道に、おのれの足音のみが響く。

IMGP0304

苔の緑がとても美しい。上質の緑のビロードが敷き詰められているような風情。

そんなふうににして目を楽しませながら歩いていると、目の前に今日の目指すのもが見えてきた。

IMGP0316

ススキである。秋の穏やかな日射しの中、儚げに輝いていた。

IMGP0315

でも、これが目指してきたものでもない。目指してきたものはそのススキの根元の部分にある。

IMGP0275

万葉集に「思ひ草」と詠まれたナンバンギセルの花である。ナンバンギセルは他の植物の根に寄生して、そこから養分を取りながら生育する寄生植物である。葉緑素を持たぬがゆえに光合成が出来ず、他の植物の根元に寄生し生長する。ススキ、サトウキビ、ミョウガギボウシなどに寄生するらしいが私はススキの下のそれしか見たことがない。

他の植物に根元に寄生するという性質上、そう目立つ花ではない。ひそやかな花である。加えてうつむくように下を向いて咲いている様が、人の恋に苦しむ姿に似ているところから万葉人はこの花に「思ひ草」という名を付けた。

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ

万葉集にある作者不詳の歌である。「道のほとりのススキの下陰の思い草よ。その「思い」ではないけれども、今さら何を思い迷うことがありましょうか。私はあなたの愛を信じ、あなた一人を頼りに思っております。」程の意であろうか・・・

他に、時代を下って和泉式部

野辺見れば尾花がもとの思ひ草枯れゆく冬になりぞしにける

なんて歌が新古今和歌集には残されている。こっちは「野辺をみると、ススキの下陰に咲いていた あの紫の思い草も次第に枯れてゆく冬になってしまったのだなあ。」とでも訳しておこうか。

さて、これで長々と続いた私の春日大社レポートは終わる。さっさと書いてしまえばよかったのだが、ダラダラと引きずったおかげで、その間にすっかり季節が変わってしまった。今、季節は晩秋への坂を転げはじめた。ちょいと寒くなってきたが、これからひと月の間ぐらいが、大和の最も美しい季節かも知れない。