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大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

被災の里の狛犬

2011年9月、私はあの3.11以来初めて我が郷里を訪ねた。宮城県桃生郡鳴瀬町野蒜(東松島市野蒜)の地を・・・その時の一連の報告は「被災の里へ」にすべてを書いた。其の何回目かの記事で、今は完全な廃墟となった白髭神社についてレポートした。その時に、その祭神猿田彦のおわし所を守る二体の狛犬さんを紹介した。

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茫々たる夏草に覆われてはいるが、まだまだ真新しい狛犬さんである。私はその時、

狛犬だ。記憶は定かではないが、この神社には狛犬はなかったような・・・いや、記憶違いでもっと大きく古びたそれが合ったような気もする・・・ とにかく、私の記憶する白髭神社には写真のような狛犬はなかったことは確かだ。見ての通り、御影石材に刻まれたその雄姿は未だ歴史の古びを感じさせない。おそらくは私が郷里を離れた後に寄進されたものであろう。そしてすべてが失われたこの新町の集落にあって、あの3月11日以降に寄進されたものだとは到底考えられないことも事実だ。してみれば・・・この小柄な2頭の神獣はあの暗く冷たい波濤の中、自らの使命を果たすべく、この場所に於いて踏ん張り抜いたのであろう。その健気さを思いやったとき私はこの神獣たちに手を合わせずにはいられなかった。

と書いた。この狛犬さんが震災の以前からのものであろうとの推定だ。

が、その後あるサイトで、同じ白髭神社狛犬と称する写真を見た。

http://www.okumatsushima.com/mt/2009/07/post-46.html

この記事の日付は2009年7月 4日、震災の1年半ほど前のものだ。写真を比較してみると狛犬さんの面差しはよく似ている。しかしながら、この2009年のものから見ると私が撮ってきた2011年9月のものはだいぶ新しい。しかも、その足元を見てほしい。 踏みつけているものがまるで違う。とすれば、私が帰郷の際に撮影した上の二枚の写真の狛犬さん少なくとも2009年7月以降のものである・・・ということになる。問題はそのすげ替えが震災の前か後かという点に絞られる。

仮に上の引用のごとく「 この小柄な2頭の神獣はあの暗く冷たい波濤の中、自らの使命を果たすべく、この場所に於いて踏ん張り抜いたのであろう。」と考えるするならば、2009年7月には安泰であった狛犬さんをなぜすげ替えねばならなかったのかという疑問にぶち当たる。かの震災以前にも、宮城の地はこの10年以内に2003年の宮城県北部地震東松島震度6強)、8.16宮城地震震度6弱東松島震度5強)岩手宮城内陸地震震度6強東松島は震度4)という規模の大きい地震に襲われている。もし狛犬さんがすげ替えられたとするならば、それらのいずれかのタイミングが考えられるのだが、残念ながら2009年以降、3.11まで我が郷里は狛犬さんが落下し破損するほどの地震には襲われてはいない。

だとすれば、2009年にこの神社にあった狛犬さんはあの昏い波濤の犠牲となり、私が撮影した狛犬さんは、その後にどなたかの手によって(あるいは複数の善意によって)寄進されたものかと推定する他はない。鳥居が破壊され、拝殿も本殿もその跡形を残していない神の社にその守り神たる狛犬さんを奉納した方がいらっしゃるのである。それは間違いなくこの神の社の再建を期するものであったと同時に、この神の社を大事に守り抜いてきた、この町の再生を願ってのものであったに違いない。

けれども・・・我が郷里は、もはや、人の住まぬ土地になってしまった。

町の再生方針が決まったのである。私の住んでいた東松島市野蒜新町はもはや人が居住することあたわぬ土地となってしまったのである。

http://www.city.higashimatsushima.miyagi.jp/kakuka/fukkou/fukkou/jyoho.html

自分が生まれ、子ども時代、少年時代を過ごした地が、人すまぬ地になってしまったことに一抹の寂しさはある。出来ることならば、避けてほしい決定ではあった。けれども、定まった以上、仕方ない。今は遠く離れ大和の地に居住する身。故郷の町の下したこの決定に異を唱えることは一種のセンチメンタリズムに過ぎない。現に、この一月、人の住まない町となったこの一帯を、巨大メガソーラの基地に変えるべき工事の槌音が響き始めたと聞く。

となれば、そこにある人々を守るべき神の社が何時までも以前の位置にあっても仕方がない。神は守るべき人々につき従って移転するという。

その工事もすでに昨年始まっていると聞く・・・・

http://d.hatena.ne.jp/nobiru_harbor/20120427/p2

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