大和逍遥   

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伊勢本街道と初瀬の街並

奈良興福寺の放生池、猿沢池を起点として南に走る上街道(古くは上つ道)は天理の町を抜け、桜井市に入り、私の住む三輪を抜けたあたりで、これまた古代官道である横大路と交差し明日香へと向かう。この交差を横大路に従って東に進むと以前私が紹介した脇本の地に至る。更に東へと向かえば、出雲大和朝廷発祥の地のごく近くにこんな地名があるのは興味深いね)。それから初瀬の地に至る。道はここで終わることなく榛原、山粕、菅野、奥津、多気、津留、相可、田丸など地を抜けて宇治山田は伊勢神宮へと至る。総距離約129キロ、伊勢本街道である。

桜井市慈恩寺の地にて横大路と交差してから、榛原の地まで国道165号線と並行して走っている故、これを伊勢本街道と思うむきが少なくないが、厳密には上のリンクの通り全く同一の道ではない。しかしながらそのリンク先の地図の様に桜井市立初瀬小学校の辺りからしばし国道165号線と全く重なる。そしてこの国道は私の通勤路でもある。

道は初瀬西の交差点で再び別れ、私もここで伊勢本街道上の人となる。

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如何にも街道筋の町らしい町並みが、1㎞弱、まっすぐに続く。その突き当たりが、道の先に見える与喜山である。この与喜山は天神山とも呼ばれる標高455.3mの低山で、麓に鎮座する与喜天満神社の背後約360haに暖温常緑広葉樹林が発達し、与喜山暖帯林として天然記念物に指定されている。この暖帯林は、古くから長谷寺の寺領として伐採が禁じられていたため原生林の近い状態を残し、天記念物に指定されている。今も長谷寺にとっては聖なる山として意識されており、長谷寺の僧侶は毎朝この山に向かって礼拝を欠かさない(与喜山礼拝)。古代には大泊瀬(オオハツセ)山と呼ばれていたらしく、大和の国で最も先に朝日の昇る山であって、天照大御神降臨の地としても知られる。またこの地から北の山中に分け入った小夫の地とともに天武天皇の皇女が斎宮として伊勢に赴く際にその身を浄めた泊瀬斎宮の地に比定されている。

麓には与喜天満神社が鎮座しており、この御社も何やらいわくありげな御社でありここで紹介したいのはやまやまなのではあるが、なにぶんまだまだ調査不足。後日を期したいと思う。ただこの辺りの御社の所在については昨年2月、薄氷堂さんと大論争(笑)を繰り広げたこともあり、その論争の全容を下に示しておきたい。お暇な方はちょいとクリックをしていただければありがたい

京都通信員 桜井市を歩く (3)
京都通信員 桜井市を歩く (4)

薄氷堂掲示板

 

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さて、伊勢本街道は、先ほどの道を与喜山に突き当たる前に井谷屋さんという宿屋を過ぎたあたり(上記、薄氷堂さんの記事によれば「さかえや」さんの角)でこの道をそれ、急峻な坂道となり与喜浦(おそらく古代は、与喜山の裏・・・与喜裏・・・と意識されていたであろう)の地にいたる。

この道を突き当たるまで進むと北にご覧のような道がある。長谷寺へと続く参道である。してみると、先ほどの伊勢本街道沿いの街並みは、街道道であるとともに長谷寺門前町でもあるらしい。この長谷寺への参道は車一台が通るのがやっとの道で一方通行となっており、先に述べた突き当りの方向からは車が入れない。したがってこの写真は反対側の長谷寺の門前から採ったものであるが、それなりの雰囲気はご理解いただけると思う。焼いた餡子をくるんだ草餅が有名なお店がいくつも続く古色豊かな門前町である。そしてその場所から振り向くと・・・

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長谷寺の山門前である。奥の山懐にこの寺のご本尊、十一面観音がいらっしゃる。

さて、ここからは全くの蛇足。

私の通勤路の難所はここから始まる。上の写真の白い建物の右、すなわち東を初瀬川に従って私は毎日職場へと向かう。

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この季節雪に覆われた山々を抜ける山道はあちらこちらが写真の様にアイスバーンとなっていて、毎朝の通勤も一苦労である。写真右側に見えるコンクリート製の巨大な構築物は初瀬ダム。ここはかなり急峻な道を一気に登る。

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登った先、振り返るとダムの向こうに長谷寺をその山懐にいただく初瀬山が見える。ご覧のように雲湧き上がる古代の聖山である。柿本人麻呂の歌にも

土形娘子火葬泊瀬山時柿本朝臣人麻呂作歌一首 こもりくの初瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ(万葉集巻三・428)

と詠まれているが、古来葬送の地として意識されていたこの山に長谷寺が建立されていたのも故なしとはしない。もちろん、上記のように与喜山を東に拝む山であったことも大きな理由ではあると思うが、この写真のような光景を見ると、初瀬山自体にもその理由があったように思われてならない。