大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

薩摩行・・・4

静かに・・・静かに・・・「しんぺい2号」はホームから遠ざかり始めた。

吉松駅を出発した「しんぺい2号」は人吉までの35㎞を1時間20分で走り抜ける。同じ路線を他の普通電車が1時間以内で走り抜けていることを考えればかなりゆっくりとした旅だ。観光列車としての特性がそうさせているのだ。途中、展望のよい場所で停車してみたり、停車する各駅で見学のための時間を確保したりと、本当にのんびりとした道行きだ。

ただ・・・ここを走る列車にとって、この路線がそんなに楽な路線でないのは確かだ。始発の吉松駅の標高が213m。この路線で最も高い場所にある駅が矢岳駅で536.9m。高度差、323,9mを列車はいっきにかけのぼらなければならない。この路線が完成した1909年・・・蒸気機関車は30/1000の勾配を登坂する能力は持たなかった。従ってこの区間には2か所のスイッチバック、1か所のループ線と急激な勾配をなんとかするための最大限の工夫がなされている。

吉松駅を出てまず最初のスイッチバックは真幸(マサキ)駅にある。「吉」松駅から「真幸」ということで、縁起のいい駅の名ということで結構人気があるらしい。かなり以前、愛国駅から幸福駅なんて切符が一世を風靡した時代もあったことをふと思い出した。

上述のように駅で暫しの時間を過ごした「しんぺい2号」は、すべての乗客を乗せた後、いったんこれまで走ってきた鉄路の上を後戻りするように進む。そして、止まる。再び列車は今まで来た通りの方向に進む・・・しかし、列車の走っている路は確実に真幸駅に着くまでに走っていた路とは違っている。気がつくとはるか下に真幸駅が見える。スイッチバックを実感する一瞬であった。

しばらくすると・・・

後平、踵鶴、矢岳第3、矢岳第2のトンネル。そして・・・列車は停止した。

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絶景かな・・・絶景かな・・・

霧島連山である。この絶景を乗客に堪能してもらうため列車は暫し停車する。一々の山の名は私は知らない。下を参考にしてほしい・・・

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停車した「しんぺい2号」から私が上の写真を撮った時、私の目の前にあった看板だ。窓の外に・・・列車の窓の外にこの看板は立っていた。

やがて、列車は矢岳第1トンネルを抜けて矢岳駅へ・・・

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この区間、どの駅もまことに古風な趣を呈している。ちょいと中を覗いてみよう。

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最近はやりの「昭和」を通り越していきなり明治、大正を髣髴とさせるような趣だ。そういえば鹿児島県内では現存最古の嘉例川駅もこの路線内にあった・・・何もかもが機能的に作られた近代的な駅から見れば、装飾の過ぎたつくりではあるが、それがまた妙に心地よい。

ところで、この駅にはもう一つ見どころがある。

そう、ここにもまた「かつて男の子であった方ならだれでも一度は心躍らせたであろう鋼鉄の構築物」(前回使用したフレーズではあるが)がある。

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これだったら、私にもわかる。「D58」・・・「デゴイチ」だ。

矢岳駅をすぎると、今度は下り勾配となる。再びいくつものトンネルを抜け、列車は大きな円を描いて駅に入る。大畑駅だ。難読駅名でも知られるこの駅名は「オコバ」と読む。この駅に至るまでの鉄路の大きな円は言うまでもない・・・ループ線だ。そして大畑駅をでると二つ目のスイッチバック・・・

さらにトンネルを5つぬけると鉄路は豊かな流れをまたぎ、その後しばし並走する。最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の一つ、球磨川である。

終着駅、人吉はもうすぐだ。矢岳駅からの勾配差、430.3mを「しんぺい2号」は駆け降りたのだ。

古風な、まことに古風なホームが見えてくる・・・

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