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大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

高天の里へ

この週末、私は奈良盆地は西端、二上山から葛城・金剛の山並みに従って南に走る県道30号線・・・通称山麓線を南に車を走らせていた。道の右手に九品寺一言主神社への道標が見える。けれども今日の目的地は・・・私が目指す道標は「神話の里・高天ケ原」と書いてあるものである。週末ということもあり、葛城古道を歩こうという人々の姿があちらこちらで目に入ってくる。大きな単車で整然と列を組むじさんが他の姿も見受けられる。

道の高度は次第に上がってくる。大和盆地がはるか下に見えてくるころになってやっとお目当ての道標が目に入った。標高は315m。私はその道標に従って右に曲がる。

正面に金剛の猛々しい頂が見える。谷間を抜けるように道はますます高度をあげる。坂道を4~500m上って行った先には鬱蒼とした木立が見えてくる。やや狭い道ではあるが、快適に木立の中を車は進む。これもまた、4~500m。急に視界が広がる。金剛山と、今、抜けたばかりの森との間に隠れ里のような集落が見えてくる。静かな、そして穏やかな時間がそこには流れている。いったいどれだけの昔から人々はここにすんでいるのだろう、そんな思いにさせてくれるこの山里が「高天(タカマ)」だ。

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「高天」・・・・?

この字面から思い当たる方もおられるだろう。 そう、ここはあの古事記神話の中で語られた多くの天つ神達がの住まい、そして天照大神が治めたまう地「高天原(タカアマハラ)」なのだ。

もちろんそれは伝承に過ぎない。 古来「高天原」は天上の地と考えられていた。殊に戦前の皇国史観においては天上の神々とのつながりを説くことで、天皇の権威を揺るがせないものしようとのむきも多かった。しかしながら、これを地上のどこかの場所に比定しようとの考えが無かったわけでもない。事実、京都にあった朝廷は江戸時代初期まで、この葛城の高天を「高天原」跡だと考えていたらしい。他にも、宮崎は高千穂、熊本は阿蘇蒜山高原を「高天原」跡だと考える説もある。まあ、朝廷が江戸の初期までここだと考えていた以上、この葛城の高天がもっとも由緒正しい「高天原」伝承地ということになろうか。

この高天の里において私が目指すのは「高天彦神社」。森を抜けるとすぐに左へと進む。200m程進んだ場所にある駐車場に車を止める。駐車場から参道はすぐだ。

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もう幾年過ぎたのか考えるのもおっくうになるほどの齢を過ごした巨大な杉の並木道がそこにある。道はなんの整備もされておらず歩きにくい。50mほどでその境内だ。

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小さな古びた社殿がそこにある。何もかもが苔に覆われている。その苔の厚みが、この社の上を通り過ぎた歴史の厚みと一致する。そしてその青々とした苔が、一帯に社を取り巻く鬱蒼とした森ともあいまって、何ともいえぬ清浄な霊気が漂わせている。

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例によって狛犬さんの御姿を一つ。

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首に巻かれた注連縄はこの里の人々の信心の深さを物語る。そんなに古い狛犬さんとは思えないが、その足元は深い苔の覆われ、何かしら古びたものを感じさせる。

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背後には錐形の美しい白雲嶽(写真では参道の信貴木立にさえぎられ全容が見えない)・・・・この社の御神体となる。そしてこの山にいます神・・・この神社、祭神高御産巣日神(タカミムスビノカミ)。古事記の処伝によれば天地開闢のとき高天原天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の次に現れた神だ。その神名には生産・生成を意味する語「生す(ムス)」と、霊的な人知を超えた不思議な力を意味する語「霊(ヒ)」の二語が内包されており、あらゆるものの生成にかかわる神として考えられていたことが窺がわれる。古事記神話の中では天照大神と形影相伴うような形で登場することが多く、至上神である天照大神のもと、神々を集わせ会議を開いたり、命令を発したりする神として描かれている。そして、何よりもかつてこの一帯に勢力基盤を置いた葛城氏の祖神でもある。今はすっかりとさびてしまっって宮司も配されず、社務所もないこの社ではあるが、当然のことながらその歴史は古く、その神社としての位置づけは高い。神社の来歴などを記す延喜式神名帳にはもっとも格式の高い名神大社として扱われている。

それだけ格式の高い神社であるならば・・・加えて、その祭神高御産巣日神であるならばその霊験はすぐれてあらたかに違いない。せっかくここまで足を運んだのだ。 参拝をせずして帰るわけには行かぬ。 二礼二拍手一礼の正式な参拝をすませたことは言うまでもない。


種明かしをすれば、今回の記事も以前書いた記事の焼き直しである。

http://soramitu.net/zakki/archives/234

http://soramitu.net/zakki/archives/235

ただ、この二つの記事は実際に訪れることなく、ものの本やらネットで得た知識を、地図を見ながらこねくり返したもので、実際に足を運んで書いたものではない。いわば想像の産物である。しかし、意外なことに今回実際に足を運んでみて私は私の想像が、結構正確だったことにびっくりした。我ながら大したもんだとウイスキーのロックで乾杯したいほどである。そこで以前の記事に今回とることのできた写真の配置するだけで文章にはあまり手を加えないことにした。

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