大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

西乗鞍山古墳雑感(山辺の道1日旅行番外編)

3回にわたって報告してきたように、私はその日、雨中ではあるが、山辺の道を歩いていた。正午前、私たちは天理観光農園に付随するレストラン前に到着し、その軒先を借りて昼食をとっていた。

この施設は、山辺の道のほとり、西に向かったなだらかな斜面にある。しかしながらその日はあまりにも天気が悪すぎた。雨に煙って見えない・・・何も見えない。けれども私は、その見えない西の方角にあるはずの西乗鞍山古墳い思いをはせていた。

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石上神宮の東南に広がる杣之内(ソマノウチ)古墳群に属するこの古墳は全長が128mの中型の前方後円墳で、主軸は南北に貫いている。後円部が北に位置し、前方部が南にある。後円部の直径は72m、その高さは15.5m、前方部の幅は78m、その高さは。6世紀前半、古墳時代後期の築造になる古墳である。立地からして、古代史フアンの間では何かと話題の物部氏の首長格の陵墓とみて間違いあるまい。

その時、何故・・・私は、見えもしないこの中規模古墳に思いをはせていたのか・・・理由は定かではないが、私はこの大和の国に暮らし始めたころのことを思いだしていた。

それはもう30年以上も前の4月のことだ。

私は遠く宮城の地から、千数百年も前の花の都へと上京し、大学の学びを始めていた。その近代文学講座の講義の第一回目のことである。担当の先生は、これからの講義の概要と、次回以降の報告担当(演習形式の授業であったためである)の決定が済むや否や、受講生一同を学舎外に連れ出し、この古墳へといざなった。上記のごとく、ほんの15m程の高さでありながら、立地が盆地東部の扇状斜面にある故、大和盆地を見渡すことができた。圧巻であった。

そこに・・・一人のじいさんがいた。白いポロシャツに、白いトレパン(今風のジャージではない。あくまでもトレパンである)。素足に雪駄履きという、いかにもお気軽な格好のじいさんであったが、我らが近代文学担当の先生は、そのじいさんにまことに丁重な挨拶をしていた。そして、その丁重な挨拶を受けた後、そのじいさんは古墳上から広がる見事な景観について、おもむろに語り始めた。

その一つ一つは、その後、別途に私が修得した知識と重なって、どれがその時に得たものか区別がつかなくなってしまったが、一つだけはっきり覚えていることがある。

その時(昭和54年)から遡ること47年前というから、昭和7年のことだ。この大和の地において日本陸軍の大規模な演習があった。その時に、日本陸軍の大元帥であった昭和天皇が、この古墳上からその様子を見、指揮を執ったというのだ。

このじいさん・・・なにものだ? なんでこんなに詳しいんだ?・・・この講義に参加した学生の一致した思いであったと思う。そしてその疑問はその日のうちに氷解した。

講義が終わり・・・私は前々から参加を希望していた万葉集研究会のその年度の第1回目の例会に参加した。古びたプレハブ造りの研究室棟に併設された講義室(20人も入ればいっぱいだったかなあ)の一画に私は坐っていた。居並ぶ先輩たちがみんな大人びて見えて、私のようなものがここにいていいのか…というような思いに襲われていた。

そして・・・講義室の入り口のドアが開いて・・・さっきのじいさんが入ってきた。

そう・・・それが私の以前このブログにも書いた恩師であった

以前、一度書いたような記憶があるのだが、この恩師はこの年が定年前の最後の年であり、私は一年しか教えを受けてはいない。しかも講義の方は学年の関係で受けることが出来ず、この研究会でその教えを受けるのみであった。が、やはりこの日のインパクトはかなり強かった・・・

ところで、昨年あたりからその思い出深い古墳にひとかたならぬ騒動が起きている。昨年5月24日の奈良新聞の記事を引用してみよう。

大和青垣国定公園に含まれる天理市杣之内町の「西乗鞍古墳」に土地の所有者がフェンスや「立入禁止」の看板を立て、入れなくなっている。同古墳天理市が民有地を借りて市民らの憩いの場として整備。サクラの名所として親しまれていたが、3月下旬に所有者が変わり、利用できなくなった。 学術的にも貴重な古墳で、市は現所有者に賃貸借契約を申し込んでいるが、契約額の折り合いがついておらず、先行きは不透明だ…

以前、ここは季節になれば桜が咲き乱れ、それが目当ての花見客であふれていたものだ。それが昨年からというものは・・・

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このありさまである。この土地の所有者に何があったのかは知らぬ。けれども、なんとも無粋な・・・としか言えないような所業である。

私は、この大和の地においての学び始めの地は、もう足を踏み入れることが出来ぬ土地になってしまったのである。


本題とは全く関係ない話だが、今日の夕刻何気なしにテレビを見ていたら・・・大神神社の大鳥居が写っているではないか。NHKbsの「日本縦断こころ旅」である。番組の詳細はリンク先のこの番組のホームページによられたいが、今日のこの番組の目的地はいつも私が訪れている展望台であるという・・・

なにぶん15分という短い番組である故、今日はちらっとしか映らなかったが、土曜日にはそのその増補版が放映されるという・・・(11時だったかな?)・・・乞う、ご期待である。