大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

帰郷2013・・・10

墓参りのために、再び私の故郷野蒜の地に足を踏み入れた私たちは早速先祖代々の墓所へと向かう。おととい、墓参りだというのに線香を忘れるという失態をしでかした私たちは、今日途中のコンビニでその必須のアイテムを手に入れていた。

車を止めて墓地に入る。かつては木々は生い茂り、どちらかというと薄暗かった墓地であったが、今は違う。あの日の冷たい波濤が墓石もろともそれらの木々をなぎ倒していたのだ。すぐに我が家の墓にたどり着く。早速線香に火をつけ、我がご先祖様に奉げる。膝を曲げ姿勢を低くし、手を合わせる。長らくのご無沙汰を詫び・・・そして、これからまたしばらくはご無沙汰をしなければならないことを詫びる。

さて、午前10時を過ぎた。あまりゆっくりしてはいられない。次の目的地、塩釜卸売市場に向かう。

正式な名称は塩釜水産物卸売市場。東北最大の規模を誇る塩釜魚市場に付属する施設で、仲買だけではなく、我々のような一般の者も自由に海産物を購入できる。そしてその目玉は・・・なんといっても鮪である。本鮪の水揚げ高が日本有数の魚市場であるが、特に冷凍されていない本鮪が一年を通じて水揚げされる唯一の魚市場として知られている。

私たちの目的も、もちろんそれだ。

日曜日のこととて一般客が多く、駐車場は満杯。やっとのことで車を止めて場内に入る。あちらこちらから威勢の良い声が飛び交う。それだけでも気分が高揚する。私たちはお目当ての品物を探す。場内にはいくつもの仲買店が並び、鮪を扱っている店も目移りするほどの数がある。その幾つ目の店だっただろうか・・・私たちは先ほど市場の方から運ばれてきたばかりの鮪を解体し始めている仲買店を見つけた。一度も冷凍処理の施されていない、昨日まで太平洋を高速で泳ぎ回っていた本鮪だ。

私たちはその店の位置をしっかりと記憶し、解体処理が終わる間、そのほかの品物を物色することにした。キラキラと輝く鮭、おととい私たちの舌を楽しませてくれた身の厚い松島湾産の穴子、同じく松島湾産の黒々とした光を放つ海苔・・・どれもこれも魅力的だ。けれども、そのすべてを購入していたのでは、お金がいくらあっても足りない。涙を飲んで選んだものは、塩鮭の切り身半身分と三陸産のワカメ。他に珍味類少々。

さてそろそろ解体処理が終わった頃だ。私たちは再び先ほどの仲買店の前に立つ。昨日まで太平洋を住処としていたそれは見事に切り分けられている。店の方に声をかける。お願いしたのは赤身の部分。中トロや、大トロは値もはる。それに本当の鮪のうま味を味わうには赤身が一番であるというのが私の持論である。店の方は、こちらの声にこたえて適当な大きさに切り分けてくれた。はかりに乗せることはしなかったから、どのぐらいの分量化は数値化できない。敢えて言えば、翌日我が家に送り届けられたその赤身は、食い盛りの息子二人を含めた我が家族4人がその刺身を主菜として腹がくちくなるまで食べて、それでもまだ3分の1ほどが残っているほどの量である。値はしめて2700円。関西に会っては考えられぬほどの安値だ。翌日の夕餉の主菜となったそれを食べた時、その思いは一層強まったものだ。これほどの鮪をこの値段で・・・いつも帰郷するたびに思う。

えっ・・・残りの3分の1はどうしたかって?

それは・・・さらに翌日食べたに決まっている。日が経って少々不安があった故、キッチンペーパーでしっかりと巻いて上から湯をかけ霜降り状にしたうえで、アボガドと合わせて・・・それで冷たい清酒をクイッと・・・

なまものを含んだ品々故、そのまま持って帰るわけにはいかない。鮪を買った仲買店にて、それまで購入したものを含めて宅急便で配送してもらうことにして、私たちは次の目的地に向かった。

次の目的地は、S-PAL(エスパル)。仙台駅に隣接した商業施設だ。この施設の地下では宮城県内の名産品のほとんどを購入することができる。私が帰郷する際には最終日に必ず寄っている場所だ。卸売市場からは車で30分ほど。仙台駅の裏にある駐車場に車を止めた私たちは早速S-PALを目指す。日曜日ということもあって、店内はごった返している。うろつきまわること1時間。ほぼ目的を果たした私たちは少々遅めの昼食を摂ることにした。

 

これが宮城においての最後の食事であるから、ここは仙台名物の牛たんか寿司を食べたいと思い、店を探す。S-PALはどの店もいっぱいだ。しかし仙台駅の構内には牛たんロード、寿司ロードと呼ばれるそれらの専門店街がある。そちらならば・・・と思ったが、そちらも長蛇の列。仕方なしに喫茶店に毛の生えたような店で昼食。スパゲッティーを食べる。

少々残念・・・

いよいよ旅も終わりに近づいた。仙台駅を後にした私たちは空港へと向かう。余裕を持って空港に着いた私たちは、空港の土産物店でもさらに物色。私は途中、空港内のスタンドに座りビールを一杯・・・うまかったねえ・・・

飛行機の出発の時間も近づき、受付を済ませ、出発ゲートへと向かう。そこで目にしたのがこれだ。

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出発ゲート内と、その外を隔てるガラスの写真の設備に思わず見入ってしまった。携帯電話が普及した今日、おそらくは無用のものであろう。けれども・・・携帯電話なるものが一般化する前は、飛行機に乗って旅をするということ自体が、長い別れを意味することでもあった。そんな別れ際、ゲートの内と外とを隔てるガラスを挟み、名残を惜しむ恋人達(別に親子でも夫婦でもいいが、恋人達の方がロマンティックだ)がそれぞれの別離の情を語る・・・何もかもが便利になった今日を生きる私たちが忘れてしまった何かを思い出させてくれた。

さて、フライトの時間が来た。私たちは、この豊かな地に後ろ髪をひかれるような思いで飛行機に乗り込んだ。そして1時間弱。飛行機が着陸するべき大阪は、美しい・・・それは美しい夕焼けで私たちを迎えてくれた。

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最後に・・・下の写真に写っているのが、今回の帰郷で私が手に入れた戦利品である。

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右から順に浦霞本醸造、勝山(伊達家御用酒)特別純米酒「縁」、浦霞特別純米花は咲く」、ニッカ「伊達」である。

そして・・・そのどれもがすでに空瓶になっていることは、改めて口にする必要はない・・・ごちそうさまでした。

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