大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

宮城の雑煮を作った

この年になれば、正月と言ってもそううれしいものではない。誰かがお年玉をくれるならば、きっとうれしいに違いないのだが、そんな奇特な方は世の中にそうはいらっしゃらない。かといって、正月には何の楽しみもないのかといえば、そういうわけではない。その気になればどんな食材だって手に入るこの時代、それなりの値を支払えば,、御雑煮なんていつだって口にすることは可能だ。けれども、正月以外の時期にこれを食するというのは少々気が引けてしまう。「こんな贅沢を正月以外にしてはいけない・・・」なんて自制がどうしてもはたらいてしまうのだ。

御雑煮というのはそんな食べ物だ・・・

ということで、まずは出汁をとるところから・・・・

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いきなりグロテスクな画像になってしまったが、鶏ガラである。鍋の大きさからすれば少々鶏ガラの量が少ないようにも見えるが、あんまり濃厚な出汁をとる必要はないので、このぐらいが適当なのである。我が郷里宮城では御雑煮の出汁は基本的にはハゼか穴子かの焼き干しを使う。鶏ガラを出汁に使うというのは、私の実家のオリジナルである。理由は単純である。私の父が、ハゼや穴子の出汁を好まなかっただけの話である。かといって、昆布やカツオのみの出汁では日頃と変わらない。お正月の料理にはなにかしら贅沢感が欲しい・・・そこで選ばれたのが鶏ガラというわけである。

私の住む町には肉屋などというものはなかった。お客さんが来たといえば、気が付くと裏庭で買っていた鶏が軒先に逆さにぶら下がっていた。もちろん、頭は既に刎ねられている。その鶏が捌かれて、お客さんの食卓に並ぶわけだが、運が良ければそのおこぼれが私たちにも回ってくる。しかし、お客さんが大人数だったりしたら・・・

いやいや、そんなにがっかりすることはない。我らが母親は、その可愛い子ども達(そのなかの一人が私)のために、必ずこの鶏ガラを残しておいてくれた。普段食べる味噌汁よりはかなり大きめに切った豆腐と、

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出汁をとるのに使った鶏ガラがそのまま入っていた。それに・・・季節によれば、近所の山で採れたキノコ・・・。薬味はネギだったかな?鶏ガラはもちろん、そのこびりついた肉をチューチューとすするのである。

これが・・・ごちそうに思えていた。けれども御雑煮のときは、鶏ガラを捨ててしまう。理由は簡単だ。もっとうまいものがその椀の中に入ってくるからだ。普段はごちそうと認識される、鶏ガラを捨てるほどの御馳走・・・それが我が郷里の御雑煮なのだ・・・(まあ、そのころはそれだけ貧しかったということなのだろうが・・・)

さて、上塩梅に出汁が出来てきた。次の工程は・・・

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塩鮭を煮込む。これが出汁にもなり・・・味付けにもなる。したがって、最近はやりの甘塩の塩鮭ではいけない。しっかりと塩の利いたものでなければ・・・

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かといって、この塩鮭は具にもなるのだから、あまりに過ぎてはいけない。塩気とダシが充分に出た後はこうやって外に取り出す。あとは細かく切って食べる時に椀の中に入れるのだ。

鮭を取り出した後の出汁に味付けをする。醤油と酒・・・塩、少々。

先ほどの塩鮭から出た塩気もあるのでここは入れすぎると、かなり塩辛いものになってしまうので注意。

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味が整ったら具を入れ始める。

まずは高野豆腐(私の郷里では み豆腐という)。太さは6,7㎜というところか・・・写真のものはかなりまちまちになっているが、これはご愛嬌。

続いて大根。

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先ほどの高野豆腐と同じ大きさのものだが、見ての通り凍っている。これは何も以前の作り置きを出してきたのではない。一度湯がいたものをわざわざ凍らせているのだ。これを凍み大根という。普段の大根のほぞ切りに火を通したものと、切り干し大根の間のような歯触りだ。一度凍った分、その身の中に隙間ができて、出汁が良くしみこむ。

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そして・・・先ほどの鮭一口大に切り分けたものとささがきのごぼうを放り込んでひと煮立ち・・・

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最後にせりをたっぷる入れて・・・火を止める。しかし・・・ここで、工程は最後ではない。この鍋の中のものを大ぶりの椀に移した後・・・

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そう、イクラをのせるのである。この工程がなければ・・・御雑煮とは言えない。ただの塩鮭のすまし汁だ。中に入るべき餅は角もち。そして、それはこんがりと焼かれていなければならない。そのおこげの風味が出汁に風味を添加するのだ・・・


以上が、我が郷里宮城の御雑煮の製造過程である。もちろんこれが宮城のスタンダードというわけではない。私が育った家のスタンダードである。それも、私の好みや関西の食材の事情で一部改正を加えている。

まずは、必需の具材を一部省略している。蒲鉾と、ずいきだ。蒲鉾は一口大に切ったものを後乗せするのだが、熱の通った蒲鉾を私は好まない。従ってこれは省略。ずいきも私の好みではないという理由で省略。そして、この御雑煮の点睛とも言うべきいくらであるが・・・今回の記事の様にイクラを後乗せするのがおそらく宮城のスタンダードだと思うのであるが、我が家ではそうしてはいなかった。鍋の火を止める直前に、ぬるま湯でほぐした鮭の筋子をほぐしたものをその汁ごと放り込むか、鍋でそのまま筋子をほぐすかしていた。だからここで筋子の塩気が出るので、そこまでの味付けはかなり抑えめにしておかなければならない。

今我が家で、宮城スタンダードのイクラの後乗せを選んだのは、関西ではそれにふさわしい鮭の筋子が手に入らないからだ(あるいはあっても高価すぎる)。

それにしても・・・正月早々、どうでもいいような我が家の家庭事情の様な文章に御付き合いいただいた。年末年始と、少々気のめいるような記事にお付き合いいただいたお詫び(お詫びにならないか・・)である・・・

こんな、愚にもつかぬようなことばかり書いていられる一年になればと・・・心から願う次第である。

その願いを持って、これから大神神社に初もうでに出かける・・・・