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大和逍遥   

別に運営している「三友亭雑記」というブログのバックアップである。

神保町に行く・・・

先日はついつい感情的になって、多くの方々の顰蹙を招きかねないことを書いてしまったので、今回はごくごく穏やかな内容を・・・若いころ・・・そう、まだ私が学生であった頃、或いは職についてほんの2,3年ぐらいの頃の事。私はしばしば東京は神田神保町の路上を徘徊していた。目的はもちろん、世界最大の古書街であるこの町の幾つかのお店を回ることにあった。

しばしばといっても、ふところ具合が常に良好ではなかった私のことだから、たかが知れている。大和の大学に通い、そのまま大和に居ついた私は、そのころは年に1、2度の頻度で郷里宮城に帰っていた。今、帰郷するとなれば、飛行機を用いることが多く、東京はどうしても素通りになってしまう。けれども、そのころまだまだ高額であった航空料金は、私を空の上の人とすることはなかった。いささかでも懐中が豊かな時は新幹線に乗ったが、多くの場合は大垣発夜行(今は「ムーンライトながら」と呼ばれ、臨時列車となっている)で先ずは東京に向かう。そして上野から東北本線の夜行急行で仙台へと向かうというのが、当時の私の帰郷のありようであった。当然のことながら、半日、或いはほとんど一日私は東京の人となる。

神保町を徘徊したのはそんな時だ。

日頃は空っぽの私の財布も、この時だけはいくらかは豊かになっていた・・・というよりもそのためにバイトに励み、豊かにするように努めていた(たかが知れて金額ではあるが・・・)。無論、肉体労働によってである。

東京駅に着いた私は山手線から中央線に乗り換え、水道橋の駅で降りる(今考えると、お茶の水でおりた方がよかったのかもしれない)。そしてその駅のカレースタンドで腹を満たした後、白山通りを駿台下の交差点を目指す。お目当ての書店は幾つか決まっている。

先ずは、この西神田界隈の日本書房と西秋書店。そして神保町に入って八木書店、小宮山書店。この4つはどうしても外せない。その他にも幾つもあったのかもしれないが、その頃の私の知識では、国文学関係の書物を探すのにどうしてもこの4つの店にはお邪魔しなければならなかった。じっくりと見て回れば、これだけでどうしても2~3時間は要してしまうが、それだけでは神田に来た甲斐がない。他にいくつも存在する魅力的な店にも足を運ばなければならない。なかなか大変な作業なのである。

先ずは上の4店をまわり、「これは・・・」と思ったの書物の値段を調べておく。そうしてそれからおもむろに他店をまわる。すると先ほど見かけたお目当ての本が思いかけず安値で出ていたりする。その場合はその店で購入し、そうでなければ先の店に戻って購入する。

ある時は、自分ではあまり必要に思えないものの、とんでもない安値で出ている本が見つけ、それと同じ本を高く売っている店を探し、そこに売りつける・・・なんてこともした。当然のことながら財布の中身は少々厚くなる。それはまた自分の欲しい本の購入資金になるのだ。そんな方法で一度の神保町で2万円近く購入資金を手に入れたことがある。

そんなことをしているとあっという間に夜となり、上野に向かわねばならない時間になる。日が暮れて腹具合の方もなにがしかの固形物を求めるようになる。そんな時私は上野界隈でなるべく空いた居酒屋を探し、ビールをちびちびと舐めながらその日の収穫物のページをめくり、安物の焼き鳥などをほおばった。その後、仙台へと向かう夜行急行の中でも缶ビールを舐めながらその延長戦を行うのは必然であった。

・・・と、何故急にこんなカビの生えた話を・・・そう、四半世紀も前の話をしだしたのかというと、実は来週の週末私は上京する。職場の慰安旅行で一度「おのぼりさん」をしようと話になったのだ。

先ずは7日の土曜日、昼ごろ東京に着いた私たちは築地、浅草とまわり、そのあたりで昼食を摂る。そのあと・・・これぞ決定的「おのぼりさん」コースであるが・・・スカイタワーへと向かう。そして夕食をとった後、半蔵門のホテルで宿をとる・・・そして翌8日、この日は3時の新幹線に乗るまで自由行動になっている。

とはいえ、私にそれほど多くの時間は許されてはいない。余計なお店に入って無駄な時間は使いたくはない。そこで東京周辺にお住まいの方で、書物好きの心ある方にお願いしたい。神保町で日曜日も開いているお薦めの古書店を教えてはいただけないであろうか・・・出来れば、国文学関係の書物を多く置いている・・・そんなお店を・・・

私が楽しみにしているのはこの半日だ。職場の他のメンバーはあれこれめぐるべきコースを考えているが、私のまわるべきコースは決まっている。皇居の回るをゆっくり歩いてもよし、地下鉄に乗るもよし・・神保町を目指す。とにかく、この半日は古書の香りに包まれたいのだ・・・

・・・なんてことを考えていたら、急にいやなことを思い出した。神保町にお詳しい方ならすぐにでもお気づきであろうが、神保町の多くの古書店は日曜日を定休日としているお店がほとんどなのだ・・・ということを思い出し、私は愕然とした。

けれども・・・もしやと思い、ネットであれこれと調べてみたら半日をつぶすのに充分すぎるだけの書店は営業しているらしい。いくらほとんどの店が定休日だといっても、元々の古書店の数が尋常ではないのが世界一の古書街だ。その「ほとんど」以外のお店だけでも、そこいらの町の古書店数を遙かに凌ぐ。それに先にあげた小宮山書店もあいている。なんとか胸をなでおろした私は、神保町の往来に身を置いているであろう次の週末を心待ちにしている。